インドネシアの水道水の衛生調査 〜準備・計画〜
Q:インドネシアで氷入りの飲み物を頼んで衛生的に安全なのか?
A:?
はじめに
海外の水道水事情 過去の例、フィリピン、インドネシア
過去の例として、インドネシアの中央カリマンタン、フィリピンのセブ島の水道水や飲用水(レストランで出される氷の入ったジュース)で簡易的な調査を行ったところ大腸菌群が検出された。インドネシア、ジョグジャカルタではより精度の高い検査を行い途上国の飲用水の安全性を定量評価する。
インドネシア パランカラヤ(カリマンタン島)にて 水道水の大腸菌群数の測定結果(約25/ml)
大腸菌自体は害のあるものではないが、大腸菌が生息できる環境は水系感染症を引き起こすその他の病原菌の存在を示すので汚染の指標となっている。 詳しい解説→ *1 出典→ *2
表1のような病原細菌が水系感染症を引き起こす。
大腸菌群・・・糞便生大腸菌と土壌細菌も一緒に測定(清潔な水でも計測される)
大腸菌・・・大腸菌群数よりも糞便汚染の指標としてより精度が高い
図1
表1 水系感染を起こす病原細菌
菌名 |
症状 |
症状としては2~5日の短い潜伏期間後に、軽度の下痢や嘔吐を引き起こし、深刻な脱水症状を誘発する。 主な発生地はアフリカやアジアの一部。 |
|
チフス菌 |
パラチフス・・・通常10~14 日の潜伏期の後に発熱で発症する。高熱や腸出血などを引き起こす。 |
食中毒症状 *3 |
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赤痢菌 |
赤痢症状、急性胃腸炎、出血性大腸炎・・・1~3日の潜伏期間の後、発熱・水様便・腹痛・しぶり腹・血便などの症状が見られる。 |
カンピロパウダー・ジュジュニ/コリ |
カンピロパウダー腸炎・・・菌で汚染された飲食物を食べたり飲んだりして1〜8日くらい経過したあとに、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱が現れる。*4 |
レジオネラ |
急性肺炎症 *5 |
その他にも、水を介した感染として、細菌よりも小さいウイルスや寄生虫などがあげられる。
目的
上下水道などのインフラの整備が不十分な地域において、飲料水の大腸菌群数の測定を行い、安全性の定量評価を行う。飲料水について、衛生に関する知識を持って上記の地域で生活を送るため。
準備物
サンプル:
- 市販のミネラルウォーター
- 水道水
- レストランの氷入りの紅茶、
- 氷無しの紅茶
実験器具:
恒温器、コンパクトドライ「ニッスイ」EC 菌数測定用乾式簡易培地、ピペット、除菌用アルコール、ビニール手袋、ビニールカップ
手法
1)サンプルの収集
2)サンプルの希釈:サンプル1mlをビニールカップに入れ、希釈水9mlを注入し10倍希釈のサンプルを用意する。
3)コンパクトドライに各サンプルを1mlずつ投入する。
4)平均をとるため1)〜3)の動作をもう1度繰り返す。
5)37±2℃で24時間静置したのちに裏面からコロニーの数を測定する。
結果の予測
・市販のミネラルウォーターには大腸菌群は含まれていない。もし検出されれば測定過程での汚染の可能性が高いので、測定時の汚染には十分に注意する。
・水道水は、そもそも浄水場での処理が完全でない、かつ送水過程での汚染が考えられるため大腸菌群は検出される。
・レストランなどで氷入りの飲み物を頼んだ場合、ミネラルウォーターで生成された氷であれば安全だが、氷が水道水由来であると大腸菌群は検出される。
疑問点
寄生虫の観点(人間に入る寄生虫は?水道水から入る寄生虫は?そもそも寄生虫とは何なのか?)
何が問題で汚染?
*1:
これらの水系感染症を防止する観点から重要な細菌学的指標に大腸菌群がある。大腸菌群は哺乳類の腸管内に棲息しており、それ自身が病原性を有するわ けではない。しかし、大腸菌群が公共用水域に存在することはその水がし尿によって汚染されていることを示し、他の消化器系の病原菌も存在するということに なる。このような観点から大腸菌群は糞便生由来の病原性物による汚染の指標として用いられている(※)。
※大腸菌群数の中には土壌中の細菌も含めて計測するので、新しい水道基準では糞便汚染の指標としてより精度の高い大腸菌を基準項目として採用している。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
*4: goo へルスケア 家庭の医学
http://health.goo.ne.jp/medical/10P40700
*5: メルクマニュアル医学百貨 肺炎について: